月に群雲

都内在住大学生による旅日記 主に鉄道について

ムーンライトながら 廃止か存続か?

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1.はじめに

おそらくこの記事を読んでいる方の中に,「ムーンライトながら」を知らない方はいないでしょう.それほど有名な列車であります.

元々は名前のないただの普通列車であり,その昔は通称「大垣夜行」などと呼ばれておりました.1996年にこの大垣夜行を代替する形で登場した列車が,この記事の主役「ムーンライトながら」であります.

定期列車として東京~大垣を一日一往復運行し,春休みや夏休み,年末年始といった青春18きっぷの利用期間にはさらにもう一往復,臨時列車が設定されるほどの人気ぶりでした.しかし,低料金で乗ることのできる高速バスの台頭やその他諸々の影響により,利用客が減少し,2009年に定期運航が終了しました.それ以降は,18きっぷの利用期間に臨時列車として運転されるのみとなりました.

ところが近年では,かつてに比べ臨時列車の運転期間が年々減少しております.さらに,現在使用されているJR東日本大宮総合車両センター185系が老朽化により置き換えられることが発表されています.風前の灯火となりつつある「ムーンライトながら」,今後の動向について考えてみたいと思います.

 

 

2.廃止か?存続か?

定期運行時代はJR東海静岡車両区の373系が使用されていましたが,臨時列車化した際にJR東日本田町車両センター183189系に変更になりました.183189系の置き換えの際にも「ムーンライトながら」廃止の噂が飛び交いましたが,2013年から使用車両を185系へとバトンタッチし,列車の運転は存続しています.

ところが,JR東日本から踊り子号等に使用している185系の置き換えが発表され,「ムーンライトながら」に使用されている波動輸送用の編成も先は長くないことが予想されます.さらに,先述したように臨時列車「ムーンライトながら」の運転日数は年々減少傾向にあります.車両を変更してまで運転を続けるのか,それとも廃止されてしまうのか,どうなるのでしょうか.

 

 

3.廃止説

こんなことを言うと,一部の鉄道ファンから反感を買ってしまうかもしれませんが,私は廃止が濃厚だと考えています.車両の都合やら会社の都合やらいろいろ複雑な事情が絡んでいますが,簡単に言うと儲からないからです.現在では青春18きっぷの利用期間のみに運転されている「ムーンライトながら」,乗客のほとんどが18きっぷの利用者であることは皆様もご承知のことと思われます.実際に調査をした訳ではないので,本当のところどうなのかは分かりませんが,車掌さんが検札している様子をうかがうと,ほとんどの乗客が18きっぷ利用者なのではないかというのが私個人の考えです.

 

つまらない文章をダラダラ書いていてもつまらないと思うので,数字で考えてみたいと思います.

現在の使用車両である18510両編成の定員は(14×4)席×4+(16×4)席×3+(17×4)×3両の計620席です.

東京発の下り列車について考えます.

仮に,指定券が完売し全員が東京から大垣まで乗車すると,指定席料金による収入は530円×620=328,600円です.

営業キロの比で分配すると,JR東日本が83,833円,JR東海が244,767円です.

また,全員が日付変更駅の小田原まで普通乗車券を利用し,小田原から青春18きっぷ一回分を利用すると仮定すると,乗車券収入はJR東日本が(401.7+1520)円×620=1,191,454円,JR東海が401.7円×620=249,054円となります. 

(*青春18きっぷのJR各社の配分には諸説ありますが,ここではこちらの記事(https://seisyun.tabiris.com/uriage.html)を参考にして6社で均等に分配していると仮定して計算しています.)

 

このモデル化によると下り列車一回の運行当たりの収入はJR東日本が1,275,287円,JR東海が493,821円となります.

 

上り列車についても,全員が全区間乗車し,大垣から日付変更駅の豊橋まで普通乗車券を利用し,豊橋から青春18きっぷ一回分を利用すると仮定すると,上り列車一回の運行当たりの収入はJR東日本が332,887円,JR東海が1,721,421円となります.

 

ガバガバなモデル化ですが,この計算によると「ムーンライトながら」を一往復運転することに,JR東日本の収入は約160万円,JR東海の収入は約220万円となります.

 

では,「ムーンライトながら」一往復運転するのにかかる費用はいったいどれほどでしょうか.私は一般人なので正確な値を知ることは出来ませんので,ここから先はあくまで推測の話です.「ムーンライトながら」の通常料金は全区間通しで乗った場合7,460円であり,満席の場合4,625,200円となります.収入における費用の割合(他の業種でいう原価率)が仮に5割だとすると,「ムーンライトながら」を一往復運転する費用は約463万円であり,これは先ほどのJR東日本とJR東海の収入の合計を上回ります.要するに赤字です.

 

実際は普通乗車券を利用して乗る方も少なからずいるでしょうし,全員が全区間乗車するとは限りません.また,「ムーンライトながら」に乗車した後に18きっぷを利用して他の路線にも乗る方がほとんどだと思います.したがってこのモデル化が妥当かどうかは何とも言えませんが,どちらにせよ「ムーンライトながら」が走らせれば走らせるほどお金の入る列車ではなく,走るたびに赤字が発生する列車であるということがおわかりいただけたと思います.

 

このように儲からない列車の存続のために新しい車両を導入し,そのために乗務員訓練をするということは割の悪い話ですので,使用車両の185系の引退とともに「ムーンライトながら」は廃止になるのではないか,というのが私個人の考えです.

 

 

4.存続説.後継車両は?

実は,かつての使用車両である183189系の引退の際にも,「ムーンライトながら」廃止の噂が飛び交っておりました.しかし,使用車両を185系にバトンタッチし,現在でも運転を続けています.今回の185系引退の際にも他の車両に引き継いで,「ムーンライトながら」の運転を続ける可能性もあります.仮にそうなった際の後継車両について考えてみたいと思います.

 

E257

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使用車両が185系に変更となった要因の一つに,185系がJR東海管内で定期運転していたから,ということが挙げられます.185系は熱海~三島という短い区間ではありますが定期的に運行されており,乗務員もJR東海が担当しております.踊り子号はE257系に置き換わりますが,修善寺乗り入れは今後も続くと発表されていますので,E257系がJR東海管内を走ることは確実です.ただし,修善寺踊り子用に改造された2500番台は4編成しかなく,「ムーンライトながら」に使用すると本業に支障をきたすので,余剰となっている0番台および500番台が使用される可能性が高いと思われます.ただし,これらの車両はJR東海のATS-PTに対応していないため,改造工事が必要となります.

 

373

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定期運行時代の車両であります.全14編成あり,現在では特急「ふじかわ」「伊那路」と普通列車およびホームライナーの運用のみであるので,9両×2本分の6編成の捻出も出来るかもしれません.ただし,静岡車両区の所属であり,送り込みをどうするかといった問題も出てきます.JR東海からしても,「ムーンライトながら」に使用するよりも,他の臨時列車に使用したいと思うはずです.あまり現実的ではないような気もします.

 

E231系,E233

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可能性はほとんどないと思います(笑)私が個人的に見てみたいというだけです.実際に沼津までの定期運用もありますし,団体列車として浜松まで入線したこともあります.ただし,普通車はロングシートセミクロスの組み合わせであるので,大昔の大垣夜行みたく普通車は全席自由席となるでしょう.

 

 

5.まとめ

これまで幾度となく廃止説が飛び交っておりましたが,現在もしぶとく運転を続けている「ムーンライトながら」.現在の使用車両の185系もおそらく先は長くないでしょうし,「ムーンライトえちご」,「ムーンライト信州」と同様に,使用車両の引退とともに廃止されてしまうかもしれません.大学生になるまでずっと愛知に住んでいた私にとっては,小学生の頃からお世話になってきた思い入れのある列車であるので,今後の行く末をしっかりと見守りたいと思います.

 

最後までお読みいただきありがとうございました.